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チョロンの名所「天后宮(ティエンハウ廟)」

チョロンはホーチミンの西方に広がる中華街です。ベトナムで最も大きな規模で、ここに暮らす華人の人口は40万~50万人と言われています。そのチョロンは旅行客にとっての観光エリアとしても人気で、巨大卸売り市場のビンタイ市場がそのシンボル。付近には観光用の三輪の人力車が待機しているので、これに乗ってチョロン市街地を散策することも可能です。

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今回紹介する天后宮は別名(ティエンハウ廟)と呼ばれ、ビンタイ市場と並んでチョロンの2大観光スポットとして挙げられる名高いお寺です。

アクセス

CIMG2839.jpg外観

天后宮(ティエンハウ廟)は、ビンタイ市場から徒歩10分程度の距離です。この周辺にはオンボン寺やチャータム教会、布市場といった見どころもいくつかあり、チョロン観光の中心となります。この周辺の名所巡りをしたい方は、予め観光ルートを決めておくと効率的でいいでしょう。チョロンには冷房の効いたカフェや、清潔なトイレを置いている店がほぼ皆無です。チョロンに行く前はしっかりと準備するようにしてください。

テト近くの様子

DSCN3996.jpg中国文化が深く根付いている

秋の中秋節と、旧暦のお正月近くなると、お寺の敷地内には御覧のような獅子舞の練習をしている様子もよく見られます。大きな太鼓やシンバルを持ってお店や子供のいる家の前で踊ることで、厄除け商売繁盛を祈ります。現在でもこの風習は市街地でもよく見られ、歴史上中国と深いつながりがあることを示しています。

ちなみに、この獅子舞はよく子供がおもしろがって自宅に連れてくる場合もありますが、親としてはチップを渡さなければならないので、面倒と考える人が多いそうです。

天后宮内部を紹介

IMG_7159.jpg細かな装飾に注目してほしい

天后宮は一応は廟のようですが、基本は僧侶もいる寺院と考えてください。日本では神社の中に廟があるという認識ですが、ベトナムの場合は廟も寺も区別していません。また、ここで祀られている神は媽祖と呼ばれる海難の守り神で、この神は道教の最高神とされています。

しかし、訪れる参拝者はみんな熱心な仏教徒であるように、ベトナムでは仏教と道教の境界線はほぼないと言っていいですし、ベトナム人に訊いてもおそらく仏教と道教の違いの認識はないでしょう。

IMG_2146.jpg中国のかけらが随所に映る

中国を表現するかのような力強い龍の彫刻に、屏風、壁画、中国漢字など、ここはまさに中華世界。壁、柱、天井と注意深く目を配ってください。きっと新しい発見もあることでしょう。ちなみに、チョロンは中国の福建省出身の実業家が築いた町と言われていて、ほとんどの寺や人は福建省ゆかりであり、出身であるようです。

媽祖が祀られている

IMG_2138.jpg則天武后と同じ地位という。つまりは道教の最高神

天后宮は1760年に建てられました。これは華人のお寺の中では最古の部類。ここで祀られている神は媽祖と呼ばれる道教で最も地位の高い神です。媽祖はティエンハウ=天后聖母とも呼ばれていて、チャウドックのバーチュアスー廟など、天后聖母はここだけではなくベトナム国内の福建省ゆかりの寺ではお馴染みの神となっています。

媽祖は福建省で実在した官吏の娘と言い伝えられていて、16歳のときに神通力を経て村の流行り病を治したとされています。しかしその後、父が海難によって帰らぬ人となり、悲痛の叫びを訴え仙人のもとで神になったという伝説があります。

螺旋線香が中華世界の証

IMG_2129.jpg天井に吊るされた螺旋の線香

中国らしい風景の一つですね。天井に吊るされた螺旋線香大小数多くあり、大きいものになると、1か月近く燃え続けることができるらしいです。このような中国らしい寺院は、華人が多く暮らすエリアではよく見られる光景です。

観光エリアでいえば、中部世界遺産ホイアンがそれに当たります。ホイアンは17世紀に栄えた交易の港町で、そのときに住み移ってきた中国人が現在では華人となって、ホイアンの町に暮らしています。その彼らが開いた寺院や集会所にも、決まって渦巻き型の線香が吊るされています。

ティンハウ (2).jpg線香体験。観光らしいことを

天后宮では、一般客もこの螺旋線香を天井に吊るす体験をすることができます(有料)。傍には線香を売るカウンターがあるので、そこで線香を買って火をつけ、専用の棒にひっかけて天井に上げます。天后宮は日本人だけではなく、ほかの外国人観光客にも人気のようで、外国人が線香を持ち上げて写真を撮るといった光景を毎日見ることができます。

おおらかな仏教

IMG_7168.jpg線香は誰もが気軽にあげることができる

ベトナムは人口の7割から8割が仏教と呼ばれるれっきとした仏教大国。しかし、東南アジア諸国のそれに比べると、戒律はかなり緩いようです。ベトナムはラオスやタイと異なり、日本と同じ大乗仏教が浸透しています。ですので、必ずしも寺院に行く必要がなければ、信仰方法も自由。最近では日本人の多くに共通している、いわゆる無宗教、無神論者も多くいます。

ですので、「自分は仏教徒じゃないから線香はあげない方がいいかな」、「外国人がおもしろがって参拝したらダメだよね」などと固いことは考えずに、気軽に参拝していってください。

<DATA>

名称:天后宮(ティエンハウ廟)
住所:710 Nguyen Trai St. Dist.1. Ho Chi Minh
営業時間:6:00~17:00

[local, 226, 31]

著者プロフィール

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ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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